ナナツモリ・タムラのblog。      「写真と遊ぼう」をテーマに      写真のはなしいろいろ。         僕の写真もすこし…。


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ハピバール「カラダ」展おわりました

先月の29日まで羽曳野市にあります障害者支援施設「はびきの園」の創作班「アトリエ・ハピバール」のメンバーによる絵画展をナナツモリ2Fで開催していました。展示は本当にあっという間に終わってしまったのですが、個人的にもとても感銘を受けた展示会だったので、思ったことや感じたことを少し書いてみようと思います。

上の写真はぼくが撮影させていただいたメンバー9人のポートレートです。この期間中展示していました。彼らのポートレートをずっと撮りたかったから、こんな機会をいただけてとてもハッピーです。
お客様に見ていただけたことはもちろん、何よりハピバールメンバーや彼らの親御さんに喜んでいただいたことがうれしかった。「息子のこんな表情みたことない!」とか「ぼくが一番かっこよく写ってる!」とか写真を何度も見てくれて…。写真ってすごいなあ、と改めて感じました。

モノクロの写真には、彼らの笑顔やハッピーが繋がっていくイメージで、ピンク色のリボンのデザインを施しました。いつもかっこよくエアギターをひいているあきらさんの写真には、リボンでギターを形どってます、とてもお気に入り♡写真が小さくて見にくいかなあ。(写真をクリックすると大きくなります!)

ハピバールのメンバーは入れ替わりで店番をしてくれていたので、みんなともゆっくり話ができました。そんな中で、笑い話や園の話だけでなく、時にはそれぞれが抱える病気の話や事故の話を、彼らはさらっと笑いながら話してくれました。
それはとても悲しい、辛い体験も…。

「長生きしたいんだ」という言葉を聞いたときに、ぼくはとても大きな衝撃を受けた。

みんな自分の作品が綺麗に額装されお客さんに見てもらえることがとてもうれしそう。
はじめてアトリエを訪れたときに感じたのは、「障害を持っている」とかそんな枠組みではなく、ぼくはクリエイターとしての彼らの作品そのものにとても惹かれた。
紙とまっすぐ対峙するその姿はかっこよくて、ぼくも写真を仕事にするはしくれとして、彼らの集中力と姿勢に尊敬のまなざしで見ていた。

彼らの働くアトリエハピバールはとても風通しがよくて、優しくて本当によい場所なんです。一度訪れたらきっと誰しもまたふらっと訪れたくなる。この場所をつくり守ってきた職員さんや親御さんたちの想いも全部詰まってるからだと思う。
このアトリエは正直自分の事務所より創作意欲わきます(笑)



ぼくはある日、同じ歳の大江くんに「毎日楽しい?」と質問したら彼は「楽しい!!」と即答しました。家族で一緒にごはん食べたりするのは楽しいし、アトリエにいる時間もすごく楽しいと。
園の行事や楽しいことがあれば、お医者さんにとめられても這ってでもいくんだって。

この展示期間中もお客さんと話せることが楽しくてしょうがないから、たちっぱなしで接客してくれた。途中でしんどくなるのに無理して頑張る。でも楽しいから休まない。かっこいいよ大江さん。トークだってめちゃくちゃ面白いし。親父ギャグはちょっとあれだけど…
「楽しい」ことにたいしてとても純粋にまっすぐ行動に移せることはとても素晴らしい。今を楽しむことが大切なことを彼らは感覚的にとてもよく知っている気がする。

ぼくも同じように、倒れてもいいから今一番ドキドキする楽しいことを考えていよう。やりたいことを信じていることを、まっすぐずっと続けていこうと確信できました。仕事や生活の中でも、ちょっとくらいネガティブなことも笑い飛ばしていつも笑っていれたらいいなあ。

最後に展示期間中大評判だった大江さんと薔薇の写真を。もはや天才!!ありがとう。


2月17日からはHAKUHUさんによる花展「白雪姫」を開催予定です、詳細はHPでおしらせします。こちらもと〜っても素敵な展示になりますよ、お楽しみに。

# by nana-photoroom | 2012-02-01 13:22 | Comments(0)

写真教室「とびら」第6期生募集開始!!

現5期生が3月の卒展の制作真っ最中、2012年度初心者のための写真教室「とびら」第6期生、そしてこども写真教室「みらい」第3期生の募集を開始します。
ナナツモリの写真教室は1年に一回の募集受付のため、昨年定員に達してしまって一年ごしでずっと待っていただいてる方もいらっしゃいました…本当に大変お待たせしました!!



続きはこちら
# by nana-photoroom | 2012-01-20 19:50 | Comments(0)

川本 陸洋氏、ワークショップのおしらせ

ぼくの友人でもある、フォトグラファー川本陸洋(かわもとくがひろ)氏によるワークショップの開催決定!ずっとずっと実現させたかったんだけど、2月にようやく実現することになりました。
とても美しい幻想的な世界を創り出し、写し撮る若手写真家です。
あるご縁でくがちゃん(愛称ですみません)から初めて作品を見せてもらったとき、すぐに彼と「一緒に何かしたいな」と思い、友達になっていただきました(笑)
ぼくには絶対撮れない写真を撮る方です。写真家としても、尊敬しています。

彼の作品ができるまでの過程が見れることは、かなり勉強になると思います。ぼくもお勉強させていただくつもりです!!
とびらやラボメンバーのみんなにぜひ受講しほしい!!
詳細は以下。申込みは田村か、photo@nana-tsumori.comまで。

# by nana-photoroom | 2012-01-19 20:39 | Comments(0)

ベトナムの旅 7 さいごの日

2011.1.1(Sun)くもり 

AM4:00、ぼくと同室の台湾人ファミリーの雇っているガイドの声で目が覚めた。「そろそろハノイにつくから準備してね」と。60代のパパに、奥さん、そして30代くらいの娘さんが同部屋だった。彼らは親戚一同も引き連れてきていて、総勢10人ほどの大所帯。とてもリッチなようだ。

ぼくは、早くに準備が整ってしまったのでハノイに着くまでまだ30分ほど時間ある。どうしようかなあなんて思っていたら台湾人のパパが「ここに座ってください」と自分のとなりを指さした。
すぐ隣に座ると、お父さんはみかんをくれた。(みかんをあげるって世界基準の平和的な行為だなあと思った!)
「日本のどこから来たんだ?」「どんな仕事をしてるの?」などなどたくさん聞かれた。彼らはとても親日家で、もう数えきれないほど日本を旅行してること、ゴルフ場は日本が世界で一番だということなんかを話していた。日本では、新幹線の乗り放題のフリーチケット?(そんなのあることを初めて知った)を使って、北から南まで旅したそうな。
お父さんも娘さんもとてもきさくで、話していたらあっと言うまにハノイについてしまった。

AM4:30ハノイの駅に着く、ここで台湾人Familyとバイバイ。心の中で、「台湾にきたらうちへ遊びにきなさい」と大豪邸に招かれるシンデレラストーリーがふと浮かんだんだけど、現実には起こらなかった。やっぱり下心はよくない。

それにしてもさっきも台湾人のお父さんに言われたけど、このベトナムの旅は本当にタイトなスケジュールだったなあ。この5日間、飛行機に電車やバス、移動時間もかなり長かったしね。もう半月ほどここにいるみたいに感じる。

ぼくはこの旅の最終日でいろんな集中力が切れてきていた。日本にいるときとおなじようにふわふわしはじめた。
まず、自分のベッドに携帯を忘れた。あわててとりに戻ったら布団の下にあったのだが…。次は改札をでるときに切符をなくしたことに気付き、地面いっぱいに荷物を広げて切符を探す姿に同情した駅員さんは「もういいからでなさい」と言ってくれた。ああ、よかった。
というよりこんな時間に駅についても何もすることがない。ちょっとお茶でも、と近くをうろうろしたけどどこもお店はあいていない。仕方がないから1時間ほど駅のベンチに座って日記を書いたりして休むことにした。こんな時間でも電車を待つ人でけっこう賑やかだ。旅のはじめはあんなに人ごみの中が不安だったのに、国や言葉が違ってもそばに人がいると安心する。

ふと足もとを見ると、旅の直前に買ったバックパックが泥だらけになっていることに気付いた。きのうまでのSAPAが夢みたいだ。

AM5:30、ホテルに着くと鍵がしまっていた。12月31日から1月1日AM11:00チェックアウトの時間まで部屋を押さえていたから、少しの時間でも広いベッドで休みたかったのに。DAVIDが起きる時間まで、しょうがないので周辺をうろうろすることに。まだあたりはまっくらだ。銀行の前の狭いスペースに腰をおろして、ただじっと座っていた。今日の僕は無気力だ。あまりにも動かないでいたら、蚊にさされた。

カメラを街に向けたのだけど、もう撮らなかった。ぼくのベトナムでの写真旅は、SAPAで完結していた。もう思い残すことはない。

日本は今頃朝起きて、お正月の挨拶でもしているのだろう。とたんに日本が恋しくなってきた。
「はやく日本に帰ろう」

AM7:00、ようやくDAVIDが起きてきてホテルの扉が開いた。ぼさぼさの髪型で「Happy New Year」と彼が言う姿を見て、憎めない人だなあと思った。
ぼくのズボンが破れてしまったので、「針と糸を貸して」と頼んだら「うちでやっとくから大丈夫!」と満面の笑み。DAVIDいいやつやん!とちょっとハッピーな気分で部屋までの階段をかけあがった。(結局あとでちゃっかり7$請求された。どう考えても高いだろう、DAVID!!)

部屋に入ってすぐに、撮影したすべてのデータをCFからHDに移していった。HDはパンパンになった。70G、2,000枚ほど撮影していた。よくがんばったよ、ぼくのいとしの5DMarkⅡちゃん。

シャワーを浴びて、10:00ごろにハノイの街に出た。
軒先にたくさんのベトナム国旗が掲げられていた。日本以外の正月の雰囲気は初めて見るから新鮮。

ホテルの近くの雑貨屋で、国旗やマルクス・レーニン主義の共産主義のシンボル「鎌とハンマー」の飾りを買った。政治的なアイテムなんだけど、どうもこういうデザインが好きで。おばあちゃんとおじいちゃんが店番をしててね、なんだかほっこりしてしまってお店の椅子に座らせてもらってちょっとお話をした。

あいもかわらず、地図も持たずブラブラする。今日はなんだかカメラが重い。この日は、70枚ほどしか写真を撮らなかった。写真も、ぜんぜん寄れていない。



この日唯一のお気に入り写真。濃い赤と水色の配色が絶妙!マーティン・パーの写真みたいだ♡この写真が撮れただけでこの日は満足した。

ホアンキエム湖に着いたらたくさんのひとひとひと。それすら撮っていなかった(笑)自転車と花。ちょっと斬新なディスプレイ。

彼女は飴細工を器用に作っていた、子供のころの友達に似ているなあと思っていたら目が合った。

その飴を買った女の子。(うしろの2人組はどいてくれなかった)

公開プロポーズでしょうか。

ベトナムの人も写真が大好き。


街は正月の活気にあふれていて、若者もみんなとてもハッピーな顏をしている。それなのにぼくはろくに写真も撮らず、さぼってばかりいた。カフェに3回ほど入ってはコーヒーを飲んだ。もうすっかり心は日本にある。みんなに会いたい。

そんなのことを考えていたら、となりに座った小さな女の子が「ByeBye」と声をかけてきた。彼女は近くにいる人全員にバイバイを言っている。そばにいたお母さんは照れくさそうに、ぼくに会釈した。「バイバイ」ぼくも女の子に手を振りかえして写真を撮った。
…この国に来て本当によかった。

この写真を最後にベトナムの写真はおしまい。ぼくにとっては、34歳にして初めてのドキドキ冒険旅行だった。ぼくは、この旅の前にもらったとっても素敵な言葉を思い出した。

「私はいつも、想像できるあらゆる悪い事は絶対に起こらないと知っていることと、全てが繋がっていると意識することを忘れずに、本物の笑顔と耳の地図を持っていくよ。」

心配していた悪い事は本当に何一つおこらなかった。
ベトナムという国は、ぼくにとって特別な場所になった。日本人のアイデンティティを持つぼくと、とおく離れたこの国に住む人が繋がった。
この国が抱える問題や、離れてみてはじめて気付かされた日本のこと。自分の足で街を歩き、人と話し、触れ合ってぼくはここでも人の心が通い合う幸せを感じた。

次はもっと荷物を軽くしていこう。

ぼくはPM8:30の飛行機に搭乗するのにPM4:00には空港につき、この旅の最初みたいに空港ではおどおどしていた。朝に買った大きな壁掛けはスーツケースに入らないものだからビニールのままスーツケースにくくりつけてお姉さんに渡したら「NO!!」って言われるし、トイレに鞄を忘れ、出国審査ではまた怒られ、飛行機の中ではジュースをこぼした。人間そんなにすぐに変われるわけではない。

だけど、この旅に出る前よりも迷いがなくなった。自分のすべきことがはっきりとわかった。
そして、写真が世界中で通用する共通言語であることに感動した。日記帳に殴り書きしてある一文を見つけた。

「カメラは無敵だ!!写真に出会えてよかった!!」

これからも写真で、たくさんの人と繋がっていきたい。
離陸してベトナムの大地が見えたとき、心から「ありがとう」を言った。
飛行機の中で、ヴァンからもらった草で編んだ馬を取り出した。この国の人々が、こどもたちがずっと笑って暮らせる世界であるように。
そしてぼくの住む愛すべき日本が、強く優しく正しい道を歩んでいけますように。

【追記】
7回にわけてお送りした、長い長い旅の記録を読んで下さった皆様、本当にありがとうございました。この旅行記を見ていただいたみなさんに少しでも、愛とか優しさみたいな、人の素朴であったかいものを届けることができるのなら、写真を撮る人間としてこれ以上ない幸せです。ぼくひとりで世界のこどもたちを救うことはできないけれど、彼らとの思い出をみなさんと共有していただくことで、何かがかわるかもしれないと信じています…。


ナナツモリ 田村 広司









# by nana-photoroom | 2012-01-16 22:52 | ベトナムの旅 | Comments(0)

ベトナムの旅 6 VAN編

12.31(Sat) くもり時々雨

AM6:00起床。この旅ではとても規則正しい生活をしている。ちょうどよい時間に眠って、朝はやく起きて、ご飯をたべる。適度な休養とゆっくりした時間。少しの筋肉痛はあるけど、体は絶好調だ。サパは今日すこし小雨が降っている、すこしホテル周辺に出てみると昨日よりも霧も濃い。

すこし歩くと、きのうマーケットで会った女の子が近づいてきた。「ヨッ」と言って肩を叩いてきた。彼女達もガイドだ。小さな村だから2日しかここにいないけど顔見知りになる。

そういえば今日は大晦日だ。日本の独特のあの大晦日のはりつめた緊張感はここにはなく、いつもと同じ暮らしがある。朝食にはパンと練乳たっぷりのベトナムコーヒーを。ベトナムに来てから、苦手だったコーヒーを飲むようになっていた。日記をつけるのもすっかり習慣になった。

朝食時に今日のトレッキングメニューを確認する。PM3:00ホテル着。きのうよりも少し長いコースが組まれている、PM5:00にはホテルを出発するようだ。今日でSAPAを離れることになる。SAPAの景色を人々を、しっかりこの目に焼き付けよう。
AM9:00トレッキングスタート。ブーが「よく眠れた?」と全員に聞いていた。「sleep well?」という英語の響きがとても女性らしく、素敵な言葉だなあと思った。

マーケットの近くにきのうよりも多くの人だかりが。今日は土曜日、週末には多くの人が集まる。

しばらく歩くと、この日もヴァンたちのグループが合流してきた。「おはよう!」と元気に挨拶をした瞬間の写真、いい笑顔だ!今日の物語の主役はこの小さな女の子。

ヴァンは大きく手を振って、足を外側に投げ出すようにずんずん歩く。アニメのキャラクターのようだ。今日はヴァンをたくさん撮ろうと決めた。


今日は視界が昨日以上に悪い。SAPAに滞在している間、視界が開けることはほとんどなく、写真もクリアなものがなかなか撮れずすこし残念だった。今日は昨日よりも足下もかなり悪いと聞いていたので、ホテルで長靴をレンタルしたが正解だった。

下の写真の彼女たちは、村からマーケットのあるSAPAへと歩いてくる。遠い村だと4〜5時間かけて歩いてやってくるそうだ。作業効率を考えてか、歩きながら縫い物をしてたり、縄を編んだりしている女性をよく見かけた。

ぼくは今日もたくさんの子供たちを撮った。あいかわらず罪悪感は残ったままで。
すこしだけわかってきたことがある。ぼくはファインダーを通して世界を見るほうが、よりその現実を正確に把握でき、また肉眼でみるよりもはるかに濃く体に入ってくるみたいだ。
手で触れたりするよりも、より感覚的で生々しく生命を、温度を感じることができる。
ぼくがどうしても知りたかったのが、こどもたちの今だった。それはもう理屈じゃなかった。シャッターを切っては、こどもたちに近寄って挨拶や握手をした。それは自分のなかでの一方的な「ごめんなさい」の意味があったのだとおもう。










視界は悪いけど、歩いているだけで本当に気持ちがいい。下写真のモン族の女性はあんまり笑わない、たまに「にやっ」とするだけ。ぼくにはやたらとおふざけのちょっかいを出してきたのだけど(笑)笑い方とか、ちょっとバカにしながら真似してくる!!失礼だなあ!でもヴァンはこの女性にとてもなついてた。ガイドのブーも、小さなヴァンをとても気にかけていた。彼女は愛されている。

この日のトレッキングコースは下り坂も多く、急ですべりやすかった。そのたびに、モン族の売り子さんたちはぼくらのそばで安全に歩けるようにお手伝いする。「あとでお土産買ってほしいから」とかそんな理由ではなく、100%の善意で手を引いているのがわかった。彼女たちはとても優しい。

深い霧の中をどんどん進んでゆく。

一緒に歩いていたヴァンが、突然道を外れて草の生い茂った足場の悪いほうへ入っていく。みんなで「危ないよ!」と言ったが本人はあっけらかん。

歩きながら、何やら手元で作っている。

ぼくは彼女が何をしているのかすこしきになって「何作ってるの?」って聞いたけど教えてくれなかった。5分ほどたって、ヴァンが「はい、これ」ってぼくに何かを差し出した。「ん??」ぼくは状況がちょっとよくわからなかったんだけど、ブーが「gift for you」だよ、と教えてくれた。草であんだかわいい動物。ヴァンは「Horse!」と教えてくれた。ぼくはこの瞬間、昨日から溜まりにたまった感情が溢れてしまって、ちょっとヴァンの顏が見れなかった。ちいさな声でありったけの気持ちをこめて「ありがとう」と言った。

もちろんぼくはこの出来事を、ぼくにだけ起こった特別で感動的なストーリーではないことはわかっていた。ヴァンは小さいけど売り子さんなんだ。これをもらって感情移入しない人はいない。現にぼくは他のモン族からも花飾りをもらったのだが、その時にヴァンは「なんでこの人にあげるのよ〜」とすねていたから。長年モン族の売り子さんたちがツーリストと接する中で、覚えたテクニックの1つなのだろうと思う。
まだ10歳の女の子が、この地で大人たちにまじってこんなふうに強く立派に生きている!!

ぼくは歩きながら泣いた。
うまく言えないんだけど、かわいそうとかそんなんじゃなくて、日本から遠く離れたこの地でこうやって頑張ってるこどもたちがいる、元気で生きてくれていることがとてもうれしかった。

この小さな手から生まれた愛らしい馬をとても大切だと思った。この旅でずっと首から下げていたパスポートケースに、壊れないように大切にしまった。
今日のトレッキングルートの目的地のひとつは、ラオチャイという村。あと20分ほどで到着する。ヴァンはそこでバイバイだよ、と言った。





がけの道を抜けると、眼下には一面の棚田。この時期は泥の色。夏にはここが一面の緑で覆われ、秋には美しい黄金色にそまるんだって。ブーが「夏や秋にもSAPAにきてね」と言った。「夏にきたら、またブーがガイドしてくれる?」と言ったら「もちろん!!次はホテルではなく私達の住む家にホームステイするといいよ!」と笑った。ありがとう。

この橋をわたるとラオチャイの村はもうすぐそこ。

ラオチャイ村はレンガでくみ上げた質素な建物がいくつか並んでいて、そこにツーリスト向けのちょっと大きなレストランがひとつだけある。

ある場所に足を踏み入れたとたん、ここで待機していたモン族の人々が一斉にツーリストを囲む。きっと、モン族の中でもルールがあって、商売をできる場所が決まっているようだ。彼女たちの最初のいい値は高めなので、ツーリストはここで値段交渉をする。



もちろん、ぼくも囲まれた。「買って買って買って!!!」とあっという間に人だかりができた。その後ろで、小さなヴァンは背伸びをして必死でぼくに訴えかける。「私から買ってほしい」と。
ぼくは、人をかき分けてヴァンの元へと行った。すると隣にいたブーが一言。
「ヴァンから買ってあげて」と。
ぼくは【うん、わかってるよ】と頷いた。
ヴァンは肩から下げていた黒い布製の鞄をふたつ指差した。
「いくらなのかな?」
「ふたつで15$。」
「うん、わかった。ありがとうヴァン、今日は楽しかったよ」とお礼を言った。
そしてバイバイを言ってその場を離れようとしたら、ヴァンが後ろから手を引っ張った。振り返ると、彼女が手首にしていた銀色のブレスレッドを外して、「これ、あげる。」と差し出した。

彼女なりの精一杯の「ありがとう」だったのだと思う。一日で宝物がふたつもぼくの元にやってきた。
「ありがとう。」
このあとに食べた昼食は、あまりのどを通らなかった。観光客の残飯めあてのかわいいわんこがテーブルの下から顔を出した。ほら、またぶれている!!(笑)

ここからはまた、ぼくら7人のパーティーでの行動になった。今日はかなりの距離を歩いている。ある場所まで行けばそこからバスがひろってホテルまで送ってくれるらしい。さあ、あとすこしだ、歩こう。ぽっかりと心に穴ぼこができたみたいで、ボーッとしてしまったのでほっぺたを抓った。ふと、昔読んだ漫画「ちびまるこちゃん」の話で、まるこがタイで出会った女の子「プサディ」の話を思い出した。(誰もわからないかな…)(笑)









バスが見えてきた、もう帰る時間だ。SAPAとのお別れも近づいている。

15分ほどバスに乗り、PM3:00 ごろホテルに着いた。着替えをして、レストランでコーヒーを飲んだ。PM5:00出発のバスまで、あと1時間弱時間があるから、街に出ることにした。大好きなマーケットにももう1度行きたかったから。
ホテルの前で水を売っているおばちゃんがいる。昨日から笑顔で挨拶してくれるこのおばちゃんから買おうと思っていたのに、すっかり忘れて他のお店で水を買ってしまってた。申し訳なかったので、今日やっとおばちゃんからお水を買えた。ハグしてくれた。

すこし散歩しよう。





街で偶然ヴァンを見かけたが、ぼくはもう彼女に話しかけなかった。すれ違いざまに最後の一枚を撮り、心の中でお別れを告げた。
彼女にとって、ぼくがたくさん出会ったツーリストの中の1人だったのだとしても、ぼくは一生彼女のことを忘れないだろう。ぼくの知らなかったこの国で、こんなにもまっすぐ生きている子供たちがいる。ヴァンやここで出会ったこどもたちがいつまでも幸せでありますようにと、心から願った。

「SAPAはとてもピースフルなところだよ」とおとついプラホバが言っていたのを思い出した。確かにここは人も自然もとても神秘的で美しい場所だった。それと同じくらい、その反対側にあるものから、どうしても目を背けることができなかった。
ここにくるまでなんの知識も入れてなかったぼくは、SAPAは手つかずの原始的な場所だと勝手に思いこんでいた。まさかホテルに無線LANまで整備されているなんて思いもしなかった。
ぼくら観光客がこの地に入ることで、彼ら少数民族は収入を得、一部の人は豊かになった。もちろん失ったものもある。近年、少数民族の文化や風習に変化が生じているらしい。90年代末までは、週末の夜になるとSAPAのマーケットにザオ族の若い男女が集まり、女の子は男たちの気をひくためにハミングのような独特の歌を歌う「歌垣」という求婚の風習があったらしい。この風習はいつしかなくなった。観光客が見物に集まり始めたからだという。

きれいごとを言うつもりもない。ぼくも観光客だし。少数民族に会いたい!とか俗っぽいこと言って写真を撮っている。
それでも、ぼくはここに来れてやっぱりよかったと思う。
知ることができてよかった。日本にいたらわからなかった。自分の目で直接見て、この手で触れたものしか、やっぱり実感できないし次の行動に移せない。
ぼくが何もわからず、感覚でベトナムの地を旅先に選んだのも、きっと全部ここに繋がっていたのだと妙に納得した。九州の旅でも同じ感覚があった。2011年の最後の日を、この場所で過ごすことができて本当によかった。
ラオカイ行きのバスに乗りこみ、また2時間かけて山を下ってゆく。ここから寝台列車でハノイの街へと帰ります。この旅も残すところあと一日…

2012年、ぼくは人生ではじめて新年を日本じゃない場所で迎えた。しかも、寝台列車の4人部屋で台湾人Familyご一行と一緒に…。

2012年が平和で穏やかな一年でありますように…


最終話へつづく





# by nana-photoroom | 2012-01-13 21:47 | ベトナムの旅 | Comments(2)
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